新型コロナ感染とBCG
結核は空気感染、飛沫感染、接触感染する病気で、わが国では今でも毎年2万人前後感染しています。発症者の約7割が60歳以上の高齢者ですが、小児、若年者の感染も診られます。
結核の予防接種は、経費接種用乾燥BCGワクチンを使用し、通常は生後5−8か月の乳幼児を表人的な接種期間としています。
世界に蔓延している新型コロナウィルスに対して、幼少期にBCG接種している地域では感染や感染後の重症化抑制に有効ではないかという仮説が立てられました。
これについて、日本ワクチン学会は、次のような声明文を4月3日付で発表しました。
2020 年 4 月 3 日 日本ワクチン学会 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対する BCG ワクチンの効果に関する見解【2020.4.3 Ver.2】 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の広がりが、国内外で医学的、社会的に大き な問題となっています。国内でも感染者数と共に死亡者数が日増しに増加している状況 ですが、一部の国と比較しますと、現時点では爆発的ではなく、緩やかなカーブを描い ているように思われます。この原因は、これまでの政府および各地方自治体による様々 な施策が功を奏していることと、国民一人一人の自制の効いた行動と心掛けによるとこ ろが大であるとまずは考えられます。 一方で、国内外より、幼少期の BCG ワクチンの接種の有無が各国の患者数や重症者数 の多寡に関与しているのではないかという仮説 1)が提唱されています。国外では、医療 従事者における BCG ワクチン接種の有効性を確認するための臨床研究も準備されてい る 1,2)ということです。 これを受けて、一般に新型コロナウイルス感染症による重症化のリスクが高く、BCG ワクチンの接種歴がない世代の方々より、接種を希望する声が医療機関に届き始めてい るようです。 こうした動きに対しまして、日本ワクチン学会の見解として、留意すべきポイントを 下記のようにまとめました。
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イスラエル・テルアビブ大学での調査がJAMA(The Journal of the American Medical Association)で発表され、小児期のBCG接種が成人期のCOVID-19に対して保護効果があるという考えを支持しない」という報告でした。
新型コロナ陽性率とBCG接種歴の関係は?/JAMA |
原著論文はこちら
→https://jamanetwork.com/journals/jama/fullarticle/2766182
新型コロナ感染予防に、実際に一部のクリニックでは成人にBCG接種しているところもあるようですが、当院では決してお薦めしません。
高齢者へのBCG接種は、思わぬ副反応を引き起こす可能性があり危険です。BCGワクチンの禁忌の1つ、「結核の既往のある者」に当てはまる可能性が高いためです。
BCGワクチンの義務化前に生まれた人は、接種を受けていないケースも多いでしょう。しかし、日本における結核は「国民病」といわれたほどで、感染者や、感染しても発症しなかった人が少なくないと考えられるのです。
また一般に、高齢者は免疫力が低下しています。BCGワクチンは、毒性を弱めているとはいえ、生ワクチンを体内に入れる予防法です。体に負担がかからないとはいい切れません。さらに、成人がBCGワクチンを接種すると、皮膚にケロイドを生じやすくなることがわかっています。