インフルエンザワクチン供給状況

インフルエンザ予防接種のシーズンとなってきましたが、今年のワクチン供給状況はどうなっているでしょうか?
9月中旬に次のような報道がされたのをご存じの方もいらっしゃるかと思います。

インフル接種、13歳以上は原則1回…ワクチン安定確保のため (yomiDr 9月14日)

厚生労働省は、今季のインフルエンザワクチンの接種回数について、13歳以上は原則1回とするよう、都道府県を通じて、医療機関に通知した。昨季はインフルエンザが流行し、一時、ワクチンが不足した地域があった。
今季は、例年より多い約2650万本(1本で大人2回分)のワクチンが準備される見通しだが、全国で安定的な供給を確保するため、適切な接種回数の徹底を求める。
同省によると、接種が2回必要と考えられるのは13歳未満の小児で、13歳以上は1回でも、ワクチンの効果が期待できる。ただ、ワクチンメーカーは従来、13歳以上に対しても接種回数を「1~2回」としてきたため、健康な大人でも2回接種を受ける人がいる。

これは、近年需要数に対して十分なワクチン供給ができていない現状に対して、厚生労働省が予防接種シーズンに入る前に布石を打ったと思われます。

日本醫亊新報社は、9月29日付で各都道府県の医療機関に対する対応策を報道しています。

今季のインフルエンザワクチンの供給見込み

まもなくインフルエンザワクチンの接種シーズンを迎える。厚生労働省はこのほど、今季のインフルエンザワクチンの供給見込みを発表。国内4社の製造量は約2650万本(1mL=1本換算)で、昨季の使用量(2495万本)を上回り、10月当初には例年並みの1000万本程度が供給される見通しだ。厚労省は「適切に使用すれば、不足は生じない状況と考えられる」としている。

■ロット指定の早期一括購入、「厳に慎しむこと」
厚労省は9月12日付の都道府県宛て通知で、ワクチンの安定供給対策として、13歳以上への任意接種では「1回注射」が原則であることを強調。接種回数については、世界保健機関(WHO)による「9歳以上の小児・健康成人に対しては1回接種が適切」との見解も紹介している。
医療機関がワクチンの予約・注文を行うに当たっては、前年の納入時期と使用実績の正確な把握を求め、前年を大幅に上回る量の購入や製品ロットを指定しての早期一括購入については「厳に慎むこと」と釘を刺している。医薬品卸に対しても、大量注文を行う医療機関に対しては分割納入するなどの対応を求めている。

■シーズン終盤で返品した医療機関を把握へ
昨季は、ワクチンの製造過程でウイルス株の再選定を行った関係で、接種シーズン序盤の供給量が例年を下回り、地域や医療機関によっては一時的にワクチンが入手困難となる状況が生じた。一方で、前年の使用実績を考慮しない注文を行い、シーズン終盤までワクチンの在庫を抱えて返品する医療機関も問題となった。
これを踏まえ通知では、医療機関に返品を前提とした注文や在庫管理を行わないよう要請。さらに、厚労省が関係者への情報提供を前提に、接種シーズン終盤にワクチンを返品した医療機関名の情報収集を行う予定があり、場合によっては医療機関名を「公表することがある」として、杜撰な注文と在庫管理を強く牽制している。

昨年度も同様の通達がありましたが、実際にワクチンの供給は十分対応できたのでしょうか?
厚生労働省が用意した資料(2018/19シーズンの インフルエンザワクチンの供給について)を参考にしてご説明します。

最初のグラフです。
「接種シーズンの開始時期である10月当初は例年並みの供給を見込んでいる」と書かれていますが、 まず、「例年並み」が問題です。「例年」がはたして十分なワクチン製造ができていたのでしょうか?

ワクチンは製造されたらすぐに出荷されるわけではありません。検定をクリアしてはじめてメーカーから薬問屋に出荷されます。それから各医療機関に納品されるので、実際には製造から各医療機関に納品されるまでタイムラグがあるのです。
また、医療機関需要予測がそもそも間違っています。
インフルエンザ予防接種は、10月に接種開始すると多数の方が接種に医療機関に訪れます。10月中に十分な量のワクチンを医療機関に納品することが必要です。ところが実際には、十分量の納品は11月下旬から12月中旬にかけてになっています。

最後に、これまでのワクチン使用量と製造量のグラフです。
一見、必要量を上回る十分な量のワクチン製造を行っているように見えますが、この製造量は、最終出荷を合計した製造量なのです。昨年度も12月下旬に最終出荷がありましたが、その時期は予防接種を受ける人がだいぶ減ったので、薬問屋などに大量在庫をもたらしたという経緯でした。

厚生労働省が医療現場をきちんと把握していないため、このような混乱がもたらされていると考えられます。

皆さんは、このような報道に惑わされず、信頼できるかかりつけ医にご相談されることをお薦めします。