インフルエンザワクチン供給状況
インフルエンザ予防接種のシーズンとなってきましたが、今年のワクチン供給状況はどうなっているでしょうか?
9月中旬に次のような報道がされたのをご存じの方もいらっしゃるかと思います。
インフル接種、13歳以上は原則1回…ワクチン安定確保のため (yomiDr 9月14日)
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これは、近年需要数に対して十分なワクチン供給ができていない現状に対して、厚生労働省が予防接種シーズンに入る前に布石を打ったと思われます。
日本醫亊新報社は、9月29日付で各都道府県の医療機関に対する対応策を報道しています。
今季のインフルエンザワクチンの供給見込みまもなくインフルエンザワクチンの接種シーズンを迎える。厚生労働省はこのほど、今季のインフルエンザワクチンの供給見込みを発表。国内4社の製造量は約2650万本(1mL=1本換算)で、昨季の使用量(2495万本)を上回り、10月当初には例年並みの1000万本程度が供給される見通しだ。厚労省は「適切に使用すれば、不足は生じない状況と考えられる」としている。 ■ロット指定の早期一括購入、「厳に慎しむこと」 ■シーズン終盤で返品した医療機関を把握へ |
昨年度も同様の通達がありましたが、実際にワクチンの供給は十分対応できたのでしょうか?
厚生労働省が用意した資料(2018/19シーズンの インフルエンザワクチンの供給について)を参考にしてご説明します。
最初のグラフです。
「接種シーズンの開始時期である10月当初は例年並みの供給を見込んでいる」と書かれていますが、 まず、「例年並み」が問題です。「例年」がはたして十分なワクチン製造ができていたのでしょうか?
ワクチンは製造されたらすぐに出荷されるわけではありません。検定をクリアしてはじめてメーカーから薬問屋に出荷されます。それから各医療機関に納品されるので、実際には製造から各医療機関に納品されるまでタイムラグがあるのです。
また、医療機関需要予測がそもそも間違っています。
インフルエンザ予防接種は、10月に接種開始すると多数の方が接種に医療機関に訪れます。10月中に十分な量のワクチンを医療機関に納品することが必要です。ところが実際には、十分量の納品は11月下旬から12月中旬にかけてになっています。
最後に、これまでのワクチン使用量と製造量のグラフです。
一見、必要量を上回る十分な量のワクチン製造を行っているように見えますが、この製造量は、最終出荷を合計した製造量なのです。昨年度も12月下旬に最終出荷がありましたが、その時期は予防接種を受ける人がだいぶ減ったので、薬問屋などに大量在庫をもたらしたという経緯でした。
厚生労働省が医療現場をきちんと把握していないため、このような混乱がもたらされていると考えられます。
皆さんは、このような報道に惑わされず、信頼できるかかりつけ医にご相談されることをお薦めします。