海外で流行中の「麻疹」の感染者、都市部で急増…渡航歴ない人の感染が相次ぐ

日本は、平成27年3月27日に世界保健機関西太平洋地域事務局により、麻しんの排除状態にあることが認定されて以降、海外からの輸入例と、輸入例からの感染事例から患者が発生している状況です。
今般、海外において麻しんの流行が報告されており、特にヨーロッパ地域や東南アジア地域での患者報告数が増えています。今後、輸入症例や国内での感染事例が増加することに注意が必要です。

はしか患者増 海外の流行状況を注視したい
読売新聞オンライン2025/04/27麻疹(はしか)の患者が世界的に増加傾向にあり、日本でも 罹患 りかん 者の報告が相次いでいる。海外との往来が活発になった今、注意が必要だ。
国内で確認されたはしかの患者は今年に入って計78人に上っている。すでに昨年1年間の患者数(45人)を上回った。
日本はワクチン接種が進んだため、2015年に麻疹ウイルスを排除した国として世界保健機関(WHO)から認定された。にもかかわらず患者が再び増えているのは、流行国からの持ち込みが主な原因とみられる。
今年、報告された患者の半数は、ベトナムやタイなど外国で感染したとみられるケースだった。
大型連休に海外旅行を計画している人もいるだろう。アジアのほか、最近は米国の一部地域でも流行している。渡航予定者には、厚生労働省が公開している各国の流行状況を注視してもらいたい。
訪日する外国人の増加に伴い、国内に感染が持ち込まれるリスクも高まっている。大阪・関西万博が開幕して国内外から人が集まることも、感染拡大に拍車をかける可能性がある。社会全体で警戒を強めることが欠かせない。
はしかは空気感染するため感染力が非常に強く、感染者と同じ部屋にいるだけでも、うつることがある。感染すると、10~12日の潜伏期間の後、発熱や発疹の症状が出る。重症化すると肺炎や脳炎を起こし、命にかかわる。
はしかにかかったことのある人は生涯、免疫が続くとされている。かつては日本でも繰り返し流行したため、50歳代以上は感染した経験のある人が多いだろう。 また、00年以降に生まれた人は、ワクチンの定期的な接種が1歳と就学前の計2回行われており、十分な免疫があると考えら
れる。
心配なのは、罹患した経験のない人と、ワクチンを1回しか接種していない人だ。以前は定期接種が1回だけだった時期がある。
流行国への渡航前などには、医療機関で自分に抗体があるかどうか検査を受け、必要に応じてワクチンを接種することが重要だ。
ただ、一部メーカーのワクチンが、予防効果が不十分だとして出荷停止となり、供給が不安定になっている。国は他のメーカーなどに働きかけて、生産や流通が滞らないようにすべきだ。
流行国に出かけた人は、帰国後2週間程度は健康状態に留意する必要がある。発疹などの症状が表れた場合、医療機関に電話した上で医師の診察を受けてほしい。

●麻しんとは
麻しんウイルスにより起こる急性の全身感染症です。
感染後7~14日で発熱、咳、鼻水などの症状が現れ、2~3日熱が続いた後、39℃台の高熱と発疹が現れます。肺炎、中耳炎を合併しやすく、患者1000人に1人の割合で脳炎が発症すると言われています。
麻しんウイルスの感染経路は空気感染、飛沫感染、接触感染で、感染力が非常に強く、免疫を持っていない人が感染するとほぼ100%発症します。
麻しんは手洗い、マスクでは予防できず、麻しんワクチンの接種が有効な予防法です。

●感染症発生動向調査(IDWR)からのデータ

1.麻しん累計報告者数の推移 2018年〜2025年(第1〜18週)
麻しんは2017年、2018年に大流行しました。
今年度は2017年に近い増加を示しています。

2.週別麻しん報告者数 2025年第1〜18週
今年度は第8週(2/17~2/23)から急増しています。

3.都道府県別病型別麻しん累計報告者数 2025年第1〜18週(n=106)
関東・関西を中心とした全国から報告されています。

4.年齢別接種歴別麻しん累計報告者数 2025年第1〜18週(n=106)
20 歳代がで最も多く、次いで 30 歳代でした。
また、麻しん含有ワクチンの定期接種対象年齢に満たない0歳は8例でした。
麻しん含有ワクチン接種歴は、なしが31例 、1回接種が 21例、2回接種が 19例、不明が35例でした。
特に 30 歳代以上において 2 回接種を完了していない者の割合が多いです。

5.週別推定感染地域(国内・外)別
推定感染地域を国外とする届出は 51例で、最も多かった地域はベトナム(40例)、次いでタイ(3例)、フィリピン(2例)でした。
また、感染地域が国内の届出は46例 、国内または国外か不明の届出は9例であり、国内での2次感染例 や家族内感染 が報告されました。