「手足口病」が急増 東京都で約2年ぶり警報
現在、世田谷区・千歳烏山エリアを含め、東京都全域で「手足口病流行警報」が発令されるほど大流行しています。
手足口病は、主に夏に流行するウイルスの病気(いわゆる夏風邪の一種)です。子どもがかかりやすい病気ですが、大人が感染すると重症化することもあります。
原因、症状、おうちでのケア、登園の目安まで詳しく解説します。
1. 原因と感染ルート
手足口病の原因は、「エンテロウイルス」や「コクサッキーウイルス」という種類のウイルスです。
感染経路:
飛沫感染: 咳やくしゃみのしぶきを吸い込む。
接触感染: 水ぶくれに触れたり、ウイルスがついたおもちゃ、手を介して口に入る。
糞口(ふんこう)感染: 便の中に排出されたウイルスが手を経由して口に入る(オムツ替えの際などに特に注意が必要です)。
厄介なポイント: 症状が治まった後も、便からは2〜4週間にわたってウイルスが排出され続けるため、知らないうちに感染を広げてしまうことがあります。
2. 手足口病を引き起こす原因ウイルス
手足口病を引き起こす原因ウイルスは、主に「エンテロウイルス属」というグループに属する複数のウイルスです。
厄介なことに、手足口病の原因となるウイルスは1種類ではないため、一度かかっても別の種類のウイルスに感染すると、人生で何度もかかる可能性があります。
主なウイルスの種類と、それぞれの特徴は以下の通りです。
現在流行の中心となっている原因ウイルスは、コクサッキーウイルスA6型(CA6)です。
代表的な3つの原因ウイルス
その他のウイルス
上記以外にも、コクサッキーウイルスA10(CA10)などが原因で手足口病を発症することもあります。
💡 なぜ「ウイルスの種類」を特定しないの? クリニックを受診した際、基本的には「手足口病ですね」と診断されるだけで、「どのウイルスか」まで調べる検査(遺伝子検査など)は行われないことがほとんどです。 理由は、どのウイルスが原因であっても「特効薬がない(対症療法になる)」という治療方針が変わらないためです。ただし、流行の時期によって「今年はCA6が流行っているから発疹が派手に出るタイプだな」と医師が推測しながら診察することはよくあります。
3. 主な症状
感染してから3〜5日の潜伏期間を経て、以下のような症状が現れます。
特徴的な発疹(水ぶくれ) 手のひら、足の裏、足の甲、お尻、口の中(粘膜や舌)に、3〜5mm程度の少し盛り上がった、中心が白い水ぶくれ(水疱)が出ます。基本的にはあまりかゆみはありませんが、時に痛みを伴うことがあります。
発熱 全体の約3人に1人に発熱が見られます。多くは38度前後で、高熱になることは少なく、通常は1〜2日で下がります。
💡 口の中の痛み(最重要ケアポイント)
口の中にできた水ぶくれが破れて口内炎(潰瘍)のようになると、猛烈に痛みます。これにより、食事や水分が摂れなくなる「脱水症」が最も警戒すべきリスクです。
4. 治療
手足口病には、原因となるウイルス(コクサッキーウイルスやエンテロウイルスなど)に直接効く抗ウイルス薬がありません。
そのため、治療の基本は症状を和らげながら自然に治るのを待つ「対症療法(たいしょうりょうほう)」になります。ほとんどの場合は軽症で、3〜7日ほどで自然に良くなっていきます。
①発熱や「口の中の痛み」がある場合
口内炎が痛んで水分や食事が摂れないときや、高熱でぐったりしているときに処方されます。
解熱鎮痛薬(カロナール、アンヒバ、アルピニーなど)
成分名: アセトアミノフェン
特徴: 子どもにも比較的安全に使用できるお薬です。飲み薬(粉薬・シロップ・錠剤)や、吐き気があって飲めない場合のための座薬があります。熱を下げるだけでなく、口の中の痛みを和らげる目的でもよく使われます。「食事の30分前」などに使うと、痛みが和らいで水分やゼリーが摂りやすくなります。
②口の中の痛みが強い場合(局所的な治療)
口内炎治療薬(デスパコーワ、アフタゾロンなど)
口の中に塗る軟膏が処方されることがあります。ただし、小さなお子さんの場合、口の奥に塗るのを嫌がったり、唾液で流れてしまったりすることが多いため、医師の判断によって処方されないこともよくあります。
③皮膚の赤みや「痒み」が強い場合
発疹はウイルスによるものなので、基本的には「何も塗らずに清潔に保ち、自然に枯れて薄くなるのを待つ」のが一般的な治療(経過観察)になります。通常は1週間から10日ほどで自然に消えていきます。
ただし、症状の出方(痒みや痛み)によっては、以下のようなケアや処方で対応します。
特に、大人の感染や一部のウイルスの種類では強い痒みや痛みを伴うことがあります。
抗ヒスタミン薬・抗アレルギー薬(レボセチリジン、フェキソフェナジンなど)
痒みが強くて眠れないときなどに、体の中から痒みを抑える飲み薬(ドライシロップや錠剤)が処方されます。
塗り薬(レスタミンコーワクリーム、ヒルドイド、カチリ、亜鉛華軟膏など)
皮膚の痒みを抑える軟膏や、かき壊して炎症を起こしている部分を保護する軟膏が処方されることがあります。
※原則として、水疱にステロイド軟膏を塗ると悪化することがあるため、医師の指示通りに使用してください。
④ 脱水症状の兆候がある場合
口の痛みが原因で水分が全く摂れず、おしっこの量が明らかに減っているなど、脱水が疑われる場合は、クリニックの処置室で点滴(輸液)を行うことがあります。
💡 クリニックでの処方に関する補足 手足口病では、「お薬なしで様子を見ましょう(水分補給の工夫だけでOK)」と言われることも珍しくありません。これは手抜きの診察ではなく、お薬を使わなくても数日で自然に治る病気だからです。 一方で、水疱がかき壊されて細菌感染を起こしている場合は「抗生物質の軟膏」が出たり、他の風邪(咳や鼻水など)を併発している場合は「痰切りの薬など」が一緒に処方されたりすることもあります。
5. おうちでのケア・食事のコツ
手足口病のウイルスそのものを退治する特効薬(抗ウイルス薬)はありません。基本的には、熱や痛みを和らげながら自然に治るのを待つ「対症療法」になります。
最も大切なのは「口の中の痛みを刺激しない水分・食事の与え方」です。
おすすめの飲食物(冷たくて、酸味や塩気が少ないもの)
麦茶、冷たいスープ、牛乳、豆乳
経口補水液(OS-1、アクアライトなど)
プリン、ゼリー、アイスクリーム、豆腐、冷ましたおかゆやうどん
避けるべき飲食物(喉にしみて痛むもの)
オレンジジュースなどの果汁(酸味が強い)
トマト、熱いもの、塩気が強すぎるもの、パサパサして引っかかるもの
6. 病院を受診すべき「危険なサイン」
大半は1週間程度で自然に治る予後の良い病気ですが、稀に髄膜炎(ずいまくえん)や脳炎などの深刻な合併症を引き起こすことがあります。 以下の症状が見られた場合は、すぐに小児科や夜間救急を受診してください。
脱水のサイン: おしっこが半日以上出ない、泣いても涙が出ない、唇がカラカラに乾いている。
脳炎・髄膜炎のサイン: 高熱が2日以上続く、何度も激しく吐く、視線が合わない・ぐったりして元気がない、呼びかけへの反応が鈍い、激しい頭痛を訴える。
7. おうちでの予防は?
手足口病にはワクチンや予防接種が存在しません。また、大人も感染する可能性があるため、家庭内や職場での感染拡大を防ぐためには、ウイルスを「物理的に遮断する」ことが唯一にして最大の予防策となります。
① 手洗いの徹底(最大の予防)
手足口病のウイルスは、石鹸と流水による「手洗い」が最も効果的です。
手足口病の原因となるウイルスに対しては、一般的なアルコール(エタノール)消毒液は効きにくいというのが大きな特徴です。
いつ洗うか: 外出先から帰った時、食事の前、トイレの後、そしてオムツ交換の後は必ず行ってください。
重要な理由: ウイルスは、患者の便(発症後数週間排泄されることがあります)や、鼻水・唾液などの分泌物に含まれています。特に、小さな子どものオムツを替える際は、便に直接触れるリスクが高いため、交換後の徹底した手洗いが重要です。
②「共有」を避ける(特にタオル)
家庭内に感染者がいる場合、ウイルスが伝播する経路を断つ必要があります。
タオルの共有をやめる: タオルにはウイルスが付着しやすいため、一人ずつ使い捨てのペーパータオルを使うか、自分専用のタオルを使い、濡れた状態のタオルを共用しないようにします。
食事の共有を避ける: 子どもが食べ残したものを親が食べたり、スプーンや箸を共用したりすることは避けましょう。
③排泄物の適切な処理
ウイルスは便の中に数週間〜1ヶ月程度排出され続けます。
オムツの処理: 使用済みのオムツを替える際は、ビニール袋に密閉して捨ててください。
おしりの洗浄: 便が出た後、おしりを洗う際はシャワーなどで流すのが理想的です。
トイレの消毒: 感染者がトイレを使用した後は、便座やドアノブなどを塩素系漂白剤(次亜塩素酸ナトリウム)で拭くと非常に効果的です。※アルコール消毒は一部のウイルス(エンテロウイルス)には効果が薄いため、感染対策としては塩素系が推奨されます。
💡 「治ったあとも油断しない」が大切 手足口病は、症状が治まっても便の中にウイルスが長期間排出され続けます。そのため、「症状が消えたからもう安心」と思って油断せず、その後2〜4週間程度は、特にオムツ交換やトイレ後の手洗いをいつも以上に丁寧に行うことが、家族や周囲への感染を防ぐ鍵となります。
ご自身やお子さんが感染しないよう、まずは基本の手洗いを丁寧に行うことを意識してみてください。
8. 保育園・幼稚園の「登園基準」は?
手足口病は、インフルエンザのように「発熱後○日、発疹が消えるまで出席停止」という一律の厳しい出席停止期間は法律上ありません。なぜなら、症状が消えた後も長期間便からウイルスが出続けるため、完全に防ぐことが難しいからです。
一般的な登園の目安は、厚生労働省のガイドライン等で以下のように定められています。
【登園の目安】
発熱が下がっていること
口の中の痛みが治まり、普段通り食事がとれている(水分補給ができている)こと
発疹がまだ残っていても、本人が元気でしっかり食事がとれていれば登園可能です。ただし、園によって独自のルールを設けている場合があるため、事前に通っている保育園や幼稚園に確認することをお勧めします。
8. 大人への感染にも注意!
「子どもの病気」と思われがちですが、看病している親御さんにうつるケースが多々あります。大人が感染すると、子どもよりも発疹の痛みが強く(歩けないほど足の裏が痛むことも)、40度近い高熱が出るなど重症化しやすいのが特徴です。
予防の鉄則: 原因ウイルスにはアルコール消毒液が効きにくいため、オムツ替えの後や食事の前には、「流水と泡石鹸による丁寧な手洗い」を徹底してください。また、タオルの共用は避けましょう。






