麻しんの流行状況

1. 麻しんとは
・麻疹(ましん)
一般的に“はしか”とも呼ばれ、麻疹ウイルスに感染することによって引き起こされる病気のことです。

・感染経路
麻疹ウイルスは空気感染・飛沫感染・接触感染などさまざまな感染経路を持ち、非常に感染力が強いのが特徴です。特に空気感染は一般的な手洗いやマスク着用などの感染対策では予防することができず、感染者と同じ空間にいるだけで感染するリスクが生じます。そのため、公共施設や学校などでの集団感染が起こるケースも珍しくありません。

・症状
まず、麻疹ウイルスに感染すると10~12日間の潜伏期を経た後に38℃前後の発熱が2~4日間ほど続き、体のだる麻しんの症状は体内にウイルスが侵入(感染)してから,およそ10~12日後に出現(発病)します。初めにでてくる症状は,鼻水,咳,微熱など風邪のような症状です。この時点では普通の風邪と区別するのはなかなか困難です。目の充血や光に敏感になる症状を伴うこともあります。その数日後39℃前後の高熱が現れ、全身の皮疹がとても特徴的で,顔からでた発疹が全身に広がっていくのがよくある経過です。
ほっぺたの内側や歯ぐきの内側に「コプリック斑」と呼ばれる白い斑点がみられることがあります。麻しんを疑ったら,口の中の観察を行うことが非常に大切ですが,一方で近づきすぎると感染リスクも高いため注意が必要です。

一般的に小児期にかかったときの症状よりも、成人になってからかかったほうが、より症状が重くなるといわれています。

・治要
麻疹ウイルスに対する抗ウイルス薬は存在しないため、治療は発熱に対する解熱剤、喉の痛みに対する鎮痛剤などの薬物療法、高熱などによる脱水に対する点滴治療などの対処療法が主体となります。

2. 海外での麻しん発生状況
 海外において、麻しんの流行が報告されており、特にヨーロッパ地域における症例報告数は前年度の30倍以上に急増し、入院を要する重症例や死亡例も確認されています。また、訪日外客数が多い地域である東南アジア地域についても、世界的に麻しんの症例報告数が多い地域の一つとなっています。

また、国内においては、既に海外からの輸入症例が契機と考えられる事例報告があり、今後、輸入症例や国内における感染伝播事例が増加することが懸念されます。

4月4日時点での東京都感の発生情報です。(東京都感染症情報センター)
3. 麻しん報告数の推移
報告総数は4月4日の時点で6人です。

過去10年間での年別報告数では、2019年がもっとも多く124人でした。日本全国では700人を超える感染者が報告されています。

4. 年齢階級別・ワクチン接種歴別報告数
0歳2人、1−4歳1人でいずれもワクチン接種歴はありませんでした。20−29歳は1回接種のみ、40−49歳は接種歴不明でした。

5. 推定感染地域
2015年3月27日、世界保健機関西太平洋地域事務局により、日本が麻しんの排除状態にあることが認定されました。 かつては毎年春から初夏にかけて流行が見られていましたが、排除後は、海外からの輸入例と、輸入例からの感染事例のみを認める状況となっています。

6. 麻しんワクチンの接種状況
生涯で2回のワクチン接種が必要です。
接種歴および罹患歴が不明な場合は2回の接種を推奨します。不足回数分はMRワクチンでの接種を推奨します。
年齢と病気にかかったことがあるかどうかで、ワクチンの必要回数が異なりますので、以下の表を参考にしてください。

生年月日 接種回数
1972(昭和47)年9月30日以前生まれ 1回も接種していない可能性が高い年代。1978年(昭和53年)10月1日から定期接種が開始していますが(対象者は生後12ヵ月から72ヵ月)、自然感染によって免疫を十分に持っている人以外は,合計2回のワクチン接種をお勧めします。
1972(昭和47)年10月1日~1990(平成2)年4月1日生まれ 定期接種としては1回しか接種していない年代。特例措置(*)非対象者のため、免疫を十分持っていない可能性があります。これまでに合計2回の接種を受けていなければ、追加接種をお勧めします。
1990(平成2)年4月2日~2000(平成12)年4月1日生まれ 特例措置対象者(*)に相当する年代。接種率が低かったため,対象時期に2回目の接種を受けおらず、これまでに合計2回の接種を受けていなければ、追加接種をお勧めします。
2000(平成12)年4月2日以降生まれ 定期接種として2回接種を受けている年代。これまでに合計2回の接種を受けていなければ追加接種をお勧めします。

*特例措置:
2008(平成20)年4月1日から5年間の期間限定で実施された措置のこと。麻しん風しん混合ワクチンの定期接種対象者が第3期(中学1年生相当)、第4期(高校3年生相当)にも拡大され、2回目のワクチンが接種可能でした。

7. 麻しんワクチンの流通状況

麻しんワクチン(麻しん風しん混合ワクチン)の製造メーカーは、第一三共、阪大微研、武田薬品の3社があります。2014年1月16日付で、武田薬品が製造する麻疹ワクチンと一部の麻疹・風疹混合ワクチンにおいて、現在国内に流通している製品で力価が承認規格を下回る可能性が否定できないことが判明したため、出荷停止および回収することになった旨の発表がありました。このため出荷停止が解除されるまでの間、武田薬品は十分なワクチン供給ができなくなっています。

日本国内で麻疹感染患者の報告が出てくるとともに、麻しん風しん混合ワクチンワクチンが全国的にさらに供給不足になってきています。1歳未満や大人の接種希望者も急に増えてきていますが、当院ではワクチンの供給が十分となるまでMRワクチン接種は原則として定期接種の方(1歳、就学前)に限定させていただきます。

自分が麻疹に感染したことがあるかわからない、ちゃんと免疫が獲得できているかわからない場合、採血で抗体検査を受けると確認することができます。料金は2750円です。結果は3−5日ででます。抗体検査をご希望の方はご相談ください。

8. 麻しん抗体検査の見方

IgG(EIA) 2.0以下 2.0-15.9 16.0以上
判定 抗体は陰性で免疫なし 抗体は陽性だが充分な免疫なし
もう1回接種が望ましい
充分な免疫あり

 

麻疹ワクチンは全国的に供給が不足しており、現在当院でも接種が困難な状況です。各種報道においても、ワクチンが品薄のため、まず抗体検査で抗体価の確認を行うことを推奨しています。