りんご病が流行中
昨年からお知らせしているように、今年度もリンゴ病(伝染性紅斑)が流行しています。
本日、あるテレビ局から取材の申し込みがありましたが、時間の余裕がなかったためお断りしてしまいました。ごめんなさい。
両頬がリンゴのような色になる伝染性紅斑(通称・リンゴ病)が首都圏や東北を中心に流行している。主に子どもがかかり、自然によくなることが多い。だが、妊婦が感染すると胎児に悪影響を及ぼし、流産や死産につながる恐れもあり、注意が求められる。 しぶきや、手や物の接触を介して広がる。ただ、主症状である紅斑が出た後は、ほぼ感染しなくなる。 |
なぜ、りんご病が話題になるのでしょうか?
●リンゴ病(伝染性紅斑)
伝染性紅斑(でんせんせいこうはん)は、ヒトパルボウイルスB19の感染による小児を中心にしてみられる感染症で、両頬がリンゴのように赤くなることから「リンゴ病」とも呼ばれています。
小学校入学前後から2~3年の小児に多く、約半数の人が15歳までに免疫を得ますが、乳児や成人での発症もみられます。
一度感染すると免疫(終生免疫)ができ、生涯二度とかかりません。
●症状
感染経路は鼻水・咽頭などからの飛沫感染でうつります。発疹出現までの潜伏期間は17~18日です。
発疹は、両側の頬に境界がはっきりとした赤い紅斑とが出て、その後手(足)にレース状や網目状の発疹が出ます。この発疹は1週間程度続きます。
発疹が出る7~10日くらい前に、微熱などのかぜ症状がみられることが多いです。
年長児~成人では、腰や膝の関節痛がみられることがあります。
●妊娠中にパルボウイルスB19に感染したら
パルボウイルスB19の流行時期には流産や死産が多い事がわかっています。
妊婦さんが感染した場合、ウイルスが胎盤を通過し、約20%の割合で胎児 に感染を起こします。そのうちの約20%が胎児水腫(胎児のむくみ)や胎児 の貧血を起こします。これは、妊婦感染全体のおよそ4%にあたります。特 に妊娠の早い時期の感染が大きな問題となることが多く、胎児の症状は母体の感染から数週間のうちに出てくることが多いです。 妊娠後期(妊娠28週以降)の母親のパルボウイルスB19の感染による胎児水腫、死産の確率はかなり低いとされています。
●パルボウイルスの感染経路と感染予防
残念ながらパルボウイルスB19のワクチンはまだ開発されていません。また、母児感染を防ぐ 方法も確立されていません。
リンゴ病特有の皮膚の症状が出る1〜2週間前の「風邪のような症状」の時期に感染力があります。
家庭では、感染した人と接触した人の約50%が感染します。学校での流行では、感染した人とおなじクラスの10-60%の生徒が感染します。家庭内にリンゴ病のお子さんがいる場合だけでなく、地域でリンゴ病が流行している場合、小児と接することが多い職業の方は特 に注意が必要です。
●東京都の発生状況
東京都感染症情報センターのりんご病の発生状況です。青のグラフが昨年度、赤が今年度です。昨年度秋以降がりんご病罹患が増えています。
ニュースの報道などでこのデータが提示されることもあるかと思います。
感染症法に基づいて報告される感染症は、全部で113種類(2018年5月現在)あり、病気の重篤度、感染のしやすさ、感染経路などに一類から五類に分類されています。
このうち、一類から四類までのすべてと五類のうちの24種類、新型インフルエンザ等感染症は全数把握対象疾患といい、すべての医療機関に報告義務がありますが、五類感染症のうちインフルエンザや流行性耳下腺炎(おたふくかぜ)など24種類の感染症は、定点把握対象疾患といい、医療機関の中から選定し、協力していただいている 定点医療機関からのみ報告されます。
この指定された医療機関で、1週間で何人の患者が診断されたかと言うのが定点報告となります。
上のグラフは先週までの東京都感染症情報センターでの伝染性紅斑の発生報告数です。
縦軸は、「人/定点」です。罹患数は、1−2.5人/定点となっています。つまり、定点報告医療機関で1週間にりんご病と診断された方は1−2.5人ということなのです。たしかに例年と比較すると多いのですが、インフルエンザの流行期での報告数30人以上/定点と比較すると恐るるに足りません。
風しん、水痘とりんご病は、妊娠中の方が罹患すると胎児に影響する感染症です。風しん、水痘は予防接種で予防することができますが、りんご病はワクチンがないため予め予防することができません。
また、りんご病と診断されたときには中和抗体ができ感染性はなくなります。
ということで、りんご病は予防できない感染症ですが、発生頻度は低いため、妊婦さんはあまり神経質になられなくてもよいかと思います。